こんにちは、あきのりです。

今日は世界中で愛されているやさしい気持ちになれる童話、サン=テグジュペリの「星の王子さま」(Le Petit Prince)のあらすじとその感想を書きたいと思います。

星の王子さま (新潮文庫)










誰でも1度は名前を聞いたことがあるこの作品ですが、実際に読んだことがある人は少ないのではないでしょうか。

僕は大学2年生のときにこの本を読んだのですが、初めて読んだときはすごく衝撃的でした。
正直、読む前はたかが童話と舐めていました。
この本は、この小さな王子さまは、僕たちにいつの日にか忘れてしまった大切な何かを思い出させてくれます。 
そんな作品です。

▪️「僕」が砂漠で出会った不思議な男の子
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 この物語は、砂漠に不時着した「僕」が、そこで出会った星の王子様について、奇跡的生還を果たした6年後に物語として書き上げたという設定で進んでいきます。

実は作者のサン=テグジュペリは航空隊に所属していたり、航空会社のパイロットとして多くの冒険を経験していたそうです。また、彼も砂漠に不時着しそこから奇跡的な生還をしたという経験があるようです。もしかしたら、このお話は実話なのかもしれません。

このお話の最初は、「僕」の回想から始まります。
「僕」は小さなころは画家を目指していました。
ある日、像を飲み込んだ大蛇ボアの絵を描いて、おとなたちに見せました。しかし、大人たちはその絵がなんなのか理解してくれません。
説明されなければ理解できない大人たちは、「僕」に対してそんな絵を描くことよりも、算数や地理の勉強をしろと言います。結局、僕は画家になるという夢を諦めて、誰にも心を開かずに飛行士という道に進みました。

「僕」は飛行機を操縦しているときに、急にエンジンが故障して砂漠に不時着することになります。
砂漠で途方に暮れていた「僕」は人がいるはずもない砂漠の真ん中で男の子に出会います。
それが、小さな星の王子様。

小さな星の王子様は夢と子供心にあふれた少年でした。
王子様は「僕」にヒツジの絵を描いてとお願いします。しかし、「僕」は、像を飲み込んだゴアの絵しか描いたことがないので、それを描いて見せました。
すると、王子様はなんの説明も受けずにそれが、像を飲み込んだゴアだと理解して、それではなくヒツジの絵を描いてと再度お願いします。

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「僕」は何回もヒツジの絵を描き直しますが、王子様は納得しません。
我慢できなくなって、僕は穴の空いた木箱の絵を描き、この中に君が欲しがっているヒツジがいると伝えます。すると、王子様は笑顔になり、僕が欲しかったヒツジはこれだと納得してくれました。

やりとりをしている間に、その不思議で小さな王子さまについて知っていくことになります。

まず、その小さな王子さまが地球の外側にある星からやってきたこと。
次に、王子さまの故郷の星は1軒の家よりほんの少し大きいぐらいでしかないこと。
そして、王子さまは友達が欲しかったということ。

「僕」はここで、おとなに対しての皮肉を物語の中にたくさん述べています。
おとなたちが王子さまの星を小惑星B612という番号で呼んでいることや、数字にいろいろこだわってそのものの本質的な美しさや素敵さをどうでもいいと思っていることなど。
そして、「僕」もそんなおとなになってしまっていたことに気づきます。

そしてこの物語は、「僕」が大切な夢と子供心にあふれた大切な友達、小さな星の王子さまを忘れないために書き上げたものなのです。
それはきっと「僕」が、夢と子供心を思い出すための物語でもあるのでしょう。

▪️星の王子様が住む星とは。
 
バオバブとの闘い
星の王子様は、1軒の家よりもほんの少し大きいぐらいの星に住んでいます。
B612というとても小さな小惑星です。その星には、様々な植物が芽吹くと言います。
そして、その植物はいい草と悪い草があると言うのです。中でもバオバブは最悪の植物。
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こんな大きな木が育ちきってしまうと、王子様のすむ小さな星は覆われてしまいます。
そこで、木を小さなうちに食べてしまうヒツジが欲しかったのです。

数歩移動するだけで見える夕日 
王子様は夕日を見るのが好きだと言います。地球みたいな大きな星では、1日の中でも夕日が見えるのはほんのちょっとしかありません。しかし、王子様の小さな星では、数歩移動するだけで、夕日を見ることができるのです。
悲しい気持ちの時には、夕日が見たくなるよね。
そう呟く王子様は、1日に44回も夕日を見たことがあるようです。
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小さな星にやってきた一輪のバラ
「きみはごちゃ混ぜにしている……大事なこともそうでないことも、いっしょくたにしている!」
王子様は本気で怒っていた。風にむかって、金色に透き通る髪を揺らしながら。
「ぼく、まっ赤な顔のおじさんがいる星に、行ったことがある。おじさんは、一度も花の香りをかいだことがなかった。星をみたこともなかった。誰も愛したことがなかった。たし算以外は、なにもしたことがなかった。一日じゅう、きみみたいにくり返していた。『大事なことで忙しい!私は有能な人間だから!』そうしてふんぞり返ってた。でもそんなのは人間じゃない。キノコだ!」
出典 小説『星の王子様』(サン=テグジュペリ 河野万里子 訳)新潮文庫

飛行機を直すことでイライラしている「僕」は、王子様がしてきた、ヒツジはバラを食べないか?バラのトゲはなんのためにある?という質問に対して、ヒツジはバラも食べてしまう。トゲはなんの役にもたたない、花のいじわるだ。と答えます。そして、「僕」は大事なことで忙しいんだ、と王子様に怒鳴ります。上記は、そんな「僕」に王子様が言った言葉の一部です。

花はなぜ役にたたないトゲを何百万年も昔からつけるのか考えること、人が愛するバラの花がヒツジに食べられてしまうののではないかと考えることが重要でないわけがない、と王子様は「僕」に怒るのでした。

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 王子様の小さな星にある日、一輪のバラがやってきます。それは他の草木とは比べ物にならないほど、おしゃれで美しいものでした。バラはあまり控えめではなく、プライドが高かったのですが、それでも胸を打たれる美しさでした。

バラは気難しく見栄を張っては、王子様にわがままを言って困らせました。 
トラが襲ってくるかもしれない。風が吹き込むのが嫌い。

それでも、王子様はバラのわがままを聞いていたのですが、ある時、耐えられなくなります。
バラを心の底から愛していた王子様ですが、バラに対して優しくなることができず、「さよなら」と告げます。バラもそんな王子様を理解し「さよなら」と告げ、今までの言動を振り返り反省の言葉を告げますが、王子様は自分の星を後にします。

プライドが邪魔をして優しくなれないその様子は、本当に、まるで恋愛のようですね。

▪️ いろいろな星といろいろなおとなたち
 王子様は自分の星を出た後、様々な星を冒険し、様々なおとなに出会います。変なおとなたちばかりです。

全てを支配しないと気が済まない王様
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 最初についた星には王様がいました。王子様が何を支配しているのと聞くと、王様はすべてと答えます。
そして、王様は王子様にも、様々なことを命令します。王様は自分の都合の良いようにしか命令を出しません。
なんでも支配していると聞いたので、王子様は大好きな夕日を見せてと太陽に命令してくれと王様に頼みました。しかし、王様は道理に則った命令しか出さないといい、結局すぐに夕日を見せることはできませんでした。王子様はおもしろくなくなってその星を出発します。

王様は、なんでも自分が支配した気になっていて、命令に従わないと我慢できないおとなでした。
 
賞賛されたい大物気取りの男
次の星には大きな帽子をかぶった大物気取りの男が住んでいました。最初はおもしろがって、男に拍手をしていた王子様ですが、動作が単調ですぐに飽きてしまいました。王子様は男に質問しますが、大物気取りの男は反応しません。彼は自分を賞賛する声しか耳に入らないのです。つまらなくなって王子様は次の星へ出発しました。

お大物気取りの男は、褒め称えられることが目標になっていて、何も褒め称えられるようなことはしていないつまらないおとなでした。

恥じているのを忘れたい酒びたりの男
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次の星には酒びたりの男がいました。王子様が何をしているのと聞くと、男は酒を飲んでいると答えます。なんで飲んでいるのと聞くと、恥じているのを忘れるためと答えます。王子様は救ってあげたくなって、何を恥じているのと聞くと、酒を飲んでいること答えます。王子様はわけわからなくなってその星をあとにしました。

酒びたりの男はお酒に依存して自分の弱いところを認めず、悪循環に陥っているおとなでした。

星を数えて所有する実業家
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次の星は自分を有能と語る実業家の星でした。王子様がその星に来ても、計算を繰り返し続けています。
王子様がその星をどうするのと聞くと、実業家は私の所有物だと答えます。星を持っているとなんの役にたつのと聞くと、金持ちになれると答えます。金持ちになるとなんの役に立つのと聞くと星を手に入れることができると答えます。王子様は、目的もなく悪循環に陥っている酒びたりと少しにているなと思いました。それでも、実業家の考えはおもしろいと思いましたが、有能だとは思わなかったし、それが大事なことだとも思いませんでした。おとなってやっぱりどうかしてるそう感じながら、王子様はその星をあとにしました。

実業家は、何のために仕事をしているのか、何のため財産を持っているのかあまりよくわからないおとなでした。

指示に忠実に火を灯す点灯人
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次についた星はいままでの星の中で一番小さい星で、ガス灯と点灯人しかいない星でした。点灯人は朝と夜にガス灯を点けたり、消したりするのですが、この星はとても小さな星で自転が早く、1分ごとに点けたり消したりしなければいけません。王子様はこのおとなも変なおとなだと思いましたが、いままでのおとなよりはおかしくないと思いました。それは、点灯人が星を美しくするという自分以外のための仕事をしていたからです。

点灯人は、自分以外のもののために忠実に仕事をしているのに、王様や大物気取りや酒びたりや実業家たちに理解してもらえない可哀想なおとなでした。
 
自分では何も確認しない地理学者のおじいさん
次の星はとても大きな星でした。そこにいたのは大きな本を書いているおじいさん。聞くと、彼は地理学者らしい。王子様はおもしろいと思って、ここに海や山や川はありますかと聞くと、おじいさんはわからないと答えるばかり。彼が言うには、地理学者は信頼出来る探検家たちの話を書きとどめて置くことが仕事らしい。そして、おじいさんは王子様の星がどんな星だったか聞き始めます。王子様は火山のこととバラのことを話しますが、花のことは書かないといわれ疑問に思います。自分にとって大事なバラについてどうして書かないのか聞くと、花ははかないからだと答えます。王子様はバラが程なく消える恐れがある、大切な存在であることに気づき、自分の星に無防備に残してきたことに後悔します。そんな王子様におじさんは地球に向かうことを勧めるのでした。

地理学者のおじいさんは、自分ではどこにもいかず、はかないものなど見ず、不動の事実だけを書き連ねる頭でっかちなおとなでした。 

▪️地球で出会った生き物が教えてくれたこと
こうして、王子様は地球にたどり着きました。地球はどこにでもある星とは違い、大きくて多くのおとなが住んでいました。それでも、地球という星にとってみれば、おとなはとても小さいものでした。

謎めいたことばかりを言うヘビ 
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王子様はアフリカの砂漠でヘビに出会います。王子様が、君って指のように細くてそんなに強くないでしょ、というとヘビは、大型船で運ぶよりももっと遠くに君を連れて行けると言って王子様の足首にからみつきます。ヘビは、触れたものをみんな元いた土に返してやると言います。しかし、王子様は土からではなく、星からきた存在です。王子様とヘビは、ある約束をしました。
もし王子様が元いた星に帰りたくなったら手助けすると。

ヘビは死ぬことは元いたところに帰ることだと教えてくれましたが、王子様にとってはあまりよくわかりませんでした。
 
バラの花咲く庭園 
砂漠を越えて、高い山を越えて、王子様は一本の道にたどり着きました。そこを歩いていくと五千のバラが咲く庭園がありました。王子様は衝撃を受けました。自分のような花は一輪しかないと話していたバラは地球の小さな庭園の中にすら、何千とあったのです。王子様は草の上につっぷして泣き始めました。

大切なことを教えてくれたキツネの友達
「きみはまだ、ぼくにとっては、ほかの十万の男の子と何も変わらない男の子だ。だからぼくは、べつにきみがいなくてもいい。きみにとってもぼくは、ほかの十万のキツネとなんの変わりもない。でも、もしきみがぼくをなつかせたら、ぼくらは互いに、なくてはならない存在になる。きみはぼくにとって世界でひとりだけの人になる。ぼくもきみにとって、世界で一匹だけのキツネになる。」
出典 小説『星の王子様』(サン=テグジュペリ 河野万里子 訳)新潮文庫

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そんな王子さまの元にキツネが現れます。王子さまがキツネに遊ぼうというと、キツネは「なついてないから」とそれを断ります。王子さまが「なつく」とはどういうことかキツネに聞くと、キツネは上のように答えるのです。

王子さまは花が自分をなつかせ、自分が花をなつかせていたことに気づきます。

そのほかにもキツネは、友達との時間について、ならわしについて、それらが友情においてどれだけ大事なものか教えてくれます。

こうして王子さまはキツネをなつかせたのですが、お別れの時が近づいてきます。王子さまは悲しい気持ちになるなら、友達にならなければよかったと言いますが、キツネはそれでも良いことはあったと言い、王子さまにバラの庭園へもう一度行って、最後に自分のところへ来るように言います。

王子さまがもう一度バラたちに会いに行くと、今度は自分のバラとそのバラたちの違いに気づくのでした。自分が大事にしていたバラは、かけがえのないバラということに気づきます。

そして、王子さまはキツネの元へ行きました。 そして、キツネは教えてくれます。「いちばんたいせつなことは、目に見えない。きみがバラをかけがえのないものにしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ」と。

王子さまがなつかせたキツネは、友情とはなにか、そしてどうして友達はかけがえのない存在になるのかを教えてくれました。

 ▪️「僕」と王子さまの別れ
 飛行機が不時着してから一週間たちました。「僕」は王子さまの話を興味深くきいていたものの、もっていた水を全て飲み干し、絶望の淵にたたされます。
僕と王子さまは井戸を砂漠の中で井戸を探し始めるのでした。

 秘密をひとつ隠す砂漠
王子さまは夜空を見てつぶやきます。
「星々が美しいのは、ここからは見えない花が、どこかで一輪咲いているからだね。」
そして、砂漠は美しいね、ともつぶやきます。
「僕」もそれに共感します。
王子さまはまたつぶやきます。
「砂漠が美しいのは…どこかに井戸をひとつ隠しているからだね。」

見えない中心部の奥に、隠された秘密。それが、そのものの魅力を引き出しているのです。
いちばんたいせつなものは、目に見えないのです。

花のために星に帰った王子さま
「この水を飲みたかったんだ。」
井戸を見つけ、二人はどんな水よりも美味しい水を口にします。
そして、王子さまは地球に到着してもう直ぐ1年になること、この場所のあたりがちょうど到着した場所であることを「僕」に伝えます。
王子さまが、自分の星に帰ろうとしていることは直ぐにわかりました。
そして、「僕」は王子さまが金色のヘビと会話をしているところも見てしまいます。「僕」は、王子様と別れるのがこわくなり、王子さまを守ろうとします。

そこで、王子さまは「僕」にある贈り物をすることを約束しました。それは、今まで出会ってきたどんなおとなが持っているものとも違う、星空でした。

あの星々のどれかひとつで僕が笑っている。

こう伝えて、王子さまの足首で一瞬金色に何かが光ったかと思うと、小さな星の王子さまは動かなくなってしまったのでした。

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▪️僕らはいつから物語を捨てたのだろうか。
以上が、星の王子さまのあらすじです。簡単なあらすじといっておきながら、かなり詳細に書き込んでしまいましたね…。

このお話では、僕らがおとなになるにつれて、失くしてしまったものを思い出させてくれます。

小さい頃、僕たちの身の回りは物語であふれていました。
学校のグラウンドは砂漠のように感じたし、近くの公園の小さな林はジャングルのように感じました。
そこで、秘密基地をつくる僕たちは探検隊の一員です。

おとなになるにつれて、身の回りの物語は徐々になくなっていき、大切なものがなんなのかわからなくなっていきました。
像を飲み込んだ大蛇ゴアがなんだかわからなくなりました。
人とのつながりがなんなのかわからなくなりました。

この物語は僕たちが失いかけていたものに気づかせてくれます。
目に見えるものばかりにこだわらず、目に見えない大切なものに気づかせてくれます。

そして、その存在に気付いた時、ぼくは、なぜかふと優しい気持ちになれた気がするのです。

あきのり